東京オリンピック開催中に「有無を言わさず」イタリアからやってきたというご主人。帰国までの約4週間を経て、マリさんが感じたこととは(写真提供:photoAC)
「旅する漫画家」として世界を駆けてきたヤマザキマリさん。コロナ禍ではイタリアにいる家族と離れ、日本に長期滞在することになりました。しかしマリさんいわく、思いがけなく移動の自由を奪われた毎日の中でむしろ考える機会が増え、多くの気づきや発見もあったそうです。たとえば東京オリンピック開催中にイタリアから夫がやってきた際には「人間の不完全さ」をあらためて痛感したそうで――。

「風評被害」を理解できなかったイタリア人の夫

昨年(2021年)、東京でオリンピックが開催された夏、時を同じくしてイタリアから夫が来日しました。

「よりにもよってオリンピックの最中に来るのは、どうかやめてほしい。風評被害などを考慮すると、人前で会うこともできないし。私も忙しいから」

そう言って反対したのですが、彼はまずもって「風評被害」というものを理解できません。前提となる説明から始めなければならないのは、国際結婚をした者にとっての常でもあります。

「あなたはワクチンを2回接種したから動いていいと思っていても、日本では風評被害がひどい。発症していなくても、コロナウイルスの陽性になったというだけで自殺した人がいるような国なんですよ。

ましてや今、このオリンピックが強行されることに多くの人が反発を感じている。来日する外国人への偏見も発生していて、外国からウイルスをもち込んで、ばら撒くんじゃないかと思っているような人すらいるんです。そんなところに、あなたがうちのマンションに出入りして、『ヤマザキさん、こんな時期なのに旦那さんがオリンピックを見に来たんだ』なんてことを思われたら、私にとって大いによろしくありません。

日本に来るんなら、今じゃない時期にしたらいいじゃないの」