時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは東京都の60代の女性からのお便り。ある日、車を運転していると、うしろからパトカーのサイレンが聞こえてきて――。
運転で冷や汗
「ウーウーウー」。突然、けたたましい大音量で聞こえてきたパトカーのサイレン。えっ、まさか私? 心拍数が上がる。「そこの車、ゆっくりと左斜め前の店舗の駐車場に入りなさい」。キャー、ついに来た。なにがなんだかわからないまま、助手席の娘に「そこに入らなきゃ」と誘導されて停車。ドキドキが倍増する。
パトカーから降りてきたのは若い警察官。「ここはUターン禁止ですよ。ご存じですよね」「あ、いいえ、知りませんでした」「あちらに表示があります」「すみません。見てなかったです」「では免許証拝見します」。冷や汗がだらだらと流れる。
「申し訳ないですが、違反チケット切らせてもらいますね」。警察官の丁寧な口調に動悸も落ち着いてきた。
最近、もの忘れもさることながら、目がかすむなど、老化の波が押し寄せて気持ちが沈みがちだ。それでも外へ出れば気分転換になる。そのために車で外出したとたん、道を間違えてUターンしたのだ。失態にさらに気分が落ち込む。
でも、待てよ、物事は受けとめ方次第。もし人身事故を起こしていたら大変なことになっていた。ここはポジティブに変換するのだ。人も物も傷つけずに済んでよかった。
巨大なサイレン音に人の視線はくぎ付けだったはず。「恥ずかしさと罰金」は、年齢に抗おうとして焦る自分を戒め、見つめ直すいい機会だった。