2022年12月の木馬亭定席で。曲師は通常、衝立に隠れて三味線を弾くが、特別に外していただいた。曲師の玉川祐子さん(右)と浪曲師の港家小そめさん(左)(撮影:大河内禎)
浪曲は、節と啖呵で物語を聞かせる浪曲師と、それを支える曲師(三味線奏者)との二人三脚で成り立つ芸。現役最年長の曲師である玉川祐子さんは、2022年に100歳を迎えた。近年は孫ほど歳の離れた浪曲師、港家小そめさんの相三味線を務めている。サービス精神旺盛でおしゃべりが大好きな師匠の自宅で、稽古前に師弟が語り合った(構成=山田真理 撮影=大河内禎)

曲師は縁の下の力持ち

小そめ 2022年9月に木馬亭(東京・浅草)で行われた師匠の百寿記念公演は、大盛況でしたね。

祐子 大勢いらしていただいて、本当に嬉しかったねえ。

小そめ 師匠は曲師ですが、最後には浪曲も披露されて。5月の定席でも、浪曲師として主任を務められました。

祐子 曲師は縁の下の力持ち、女房役だもん。あんたがた浪曲師を、三味線と掛け声で後押しするのが役目だから、ホントは表に出なくていいの。

小そめ そんなことないですよ。最近じゃ「祐子師匠の姿をひと目でいいから拝みたい」っていうお客様のご要望やら取材やらで、衝立を外しての出演が多いじゃないですか。

祐子 おかげさまで、いつの間にやら100歳過ぎちゃった。誕生日は1922年10月1日です。いまんところ、どっこも悪いとこない。悪いのは、(頭を指して)ここだけ(笑)! この歳まで三味線を弾いていられて本当に幸せだ。おまけに、こんなかわいい弟子もいてくれて。

小そめ 師匠、嬉しいですけどね、私はもうかわいいっていう年齢でもないんですよ。(笑)