脳科学者の西剛志さんによると、認知症の最大の危険因子が《聴力低下》だそうで――(写真提供◎photoAC)

厚生労働省が発表した「簡易生命表(令和3年)」によると、男性の平均寿命は81.47年、女性の平均寿命は87.57年(2022年度)。同調査によれば、いずれも40年前からは9歳程度伸びたことになりますが、実際、80歳を超えてもイキイキしている、いわゆる《スーパーエイジャー》を目にする機会も増えた印象があります。一方、人の脳と生活習慣の関係を研究してきた脳科学者の西剛志さんいわく、認知症の最大の危険因子は「聴力低下」とのことですが――。

老人脳のリスク《ナンバーワン》は耳が悪くなること

「この器官が悪くなると脳の老化がかなり進む」という、最も気にしないといけない器官があります。それが「耳」です。

一見、耳と脳の関連性はそんなに高くないように思えますが、実は密接に関わっていて、老人脳のリスク《ナンバーワン》は耳が悪くなることなのです。

なぜ耳が悪くなるとそんなにキケンなのか? その理由は、私たちは聴覚を通してたくさんの刺激を常に受けているからです。

起きているときも寝ているときも、耳からたくさんの音声刺激が脳に入ってきます。これが脳への刺激となって老化を防ぐのです。また、失われた聴覚を視覚や触覚が補おうとすることで、認知機能も落ちやすくなると言われています。