宇崎竜童・阿木燿子夫妻。2023年10月11日に「宇崎竜童デビュー50周年メモリアルコンサート」が東京国際フォーラムで開催される(撮影◎米田育広)

2023年4月14日、東京国際フォーラムで「宇崎竜童コンサート2023 ~風のオマージュ~」が開催されました。第1部では、松田優作さん、根津甚八さん、原田芳雄さん、菅原文太さんら、宇崎さんと縁の深い故人に捧げられたレクイエムが。そして第2部では「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」「あれ!」「身も心も」など、《宇崎竜童節》を堪能できる楽曲の数々が披露されました。歓声が飛び、指笛が響くパッションに満ちた会場の雰囲気は、さながら街角のライブハウスのよう。宇崎さんの魂を燃やす歌声に、心が震えた一夜でした。10月11日には、同じく東京国際フォーラムで「宇崎竜童デビュー50周年メモリアルコンサート」も開催されます。こちらも楽しみです。現在放映中のNHK朝ドラ『らんまん』にはジョン万次郎として出演するなど、幅広く活躍中の宇崎さん。宇崎竜童×阿木燿子夫妻対談の後編では、名コンビと歌われた山口百恵さんの記憶、そしてクリエイター及び人生のパートナーとしての互いへの思いについてうかがいます。

(構成◎上田恵子 撮影◎米田育広)

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驚異的なスピードで開花した山口百恵さん

阿木 百恵さんほどメキメキと歌が上手になった歌手はいませんね。1曲ごとの成長が本当にすごかった。

宇崎 最初から表現力が大人だったね。百恵さんは3ヵ月に1枚シングルを出していたけど、僕らもそれに従い、書かせてもらっていた。産みの苦しみも当然あったけど、毎回ものすごく楽しみでした。詞が先だったから、あなたは大変だったと思うけど。彼女が17歳の時からのお付き合いで、20歳の時に『曼珠沙華』という、かなりドラマティックな曲を提供させてもらって、それを見事に歌い切ってくれたのには感動した。その間の成長には目覚ましいものがあったよね。

阿木 学習能力がものすごく高い人で、「百恵さん、ここはこう歌ったほうが」とアドバイスすると、次は完璧に仕上げてくる。二度と同じ注意をさせないの。ベテランの歌手でも、レコーディングの最中に「そこを変えて欲しい」とお願いすると、頭では分かっていても表現として、それが出来ない人が結構いるけど、百恵さんは「はい、わかりました!」って即答。それで歌い方がガラッと変わる。

宇崎 本当にそうだったね。

阿木 なんて言うのかしら、ほら、花の開花を早回しで再生するタイムプラス映像ってあるでしょう? ああいう感じで、刻々と花が開いていくのがわかる人でしたね。表現力も発声のし方も、驚異的なスピードで進化していった。すべてを高速の早回しで見せられているようで、こちらは圧倒されっぱなし。

宇崎 普通はチェックが入ると、その箇所を気にするあまり他がダメになるんだけど。百恵さんにはそれがなかった。

阿木 しかも21歳で結婚・引退なさって、家庭に入られた。あの潔さ、覚悟の決め方もハンパではなかった。ただただお見事。そう、見事という言葉が一番似合っている。百恵さんは歌手として超一流だったし、妻になっても超一流。でもご本人はサラッとしていて、そんなことを微塵も感じさせないの。

宇崎 確かに何をしても超一流。そしてお母さんとしてもね。