松本潤さん演じる徳川家康がいかに戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのかを古沢良太さんの脚本で巧みに描くNHK大河ドラマ『どうする家康』(総合、日曜午後8時ほか)。第16回では、遠江・浜松城下で襲われた井伊虎松(板垣李光人さん)から「武田信玄(阿部寛さん)のほうが領主にふさわしい」と言われて家康はショックを受ける。家康は上杉謙信との同盟を探る書状を送るが、その情報が武田方に漏れて信玄は大激怒。武田との対立は避けられず――といった話が展開しました。
一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。第35回は「三方ヶ原合戦が必見なワケ」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!
家康は理性で感情を抑えうる人物だった
前回、徳川家康は律儀者であった、約束を守る男であった、だから「信用」を広範に獲得し、天下を取れたのだ、と書きました。
すると、コメント欄に、「それは違う。だいたい家康は死の床にある豊臣秀吉との約束を破り、豊臣家を滅ぼしたではないか」とのご意見が記されていました。
ああ、これはぼくの書き方がまずかったですね。
よく「家康は短気だった」と言われます。でも本来的には、理性でそうした感情を抑えうる人物だとぼくは思っています。
なので、彼が「私は律儀な男なんですよ」と振る舞うのは、基本的に演出。信長との同盟を守ったのも、「守る」と「守らない」を天秤にかけた結果でしょう。「守る」ほうが、自分の今後にプラスだ、と計算したからじゃないでしょうか。