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自分の子どもが最初に話す言葉は親にとって気になるものですが、そもそもどうやって子どもたちは言葉を覚えていくのでしょうか。慶應義塾大学環境情報学部教授の今井むつみさん、名古屋大学大学院人文学研究科准教授の秋田喜美さんいわく、実は赤ちゃんも、ことばの音とそれに合う対象を認識できるとのことで――。

音と形の一致・不一致がわかるか

ある対象(モノ)といっしょにことばの音声を聞いたとき、そもそも赤ちゃんはそれをどのように認識しているのだろうか? まずこのことを調べたい。子どもに自分の考えをことばで表現してもらうことは、4、5歳くらいでも簡単ではない。

ましてや話ができない赤ちゃんの認識をいったいどのように調べることができるのだろうか?

この年齢の赤ちゃんは、知っていることばが非常に少なく、情報処理の能力も限られている。そのことばを聞いたことがあっても、正しい対象をすぐに見つけることは難しい。

たとえばモニターにボールとバナナの絵を提示し、「ボールを見て」と言われてもすぐにボールを見ることができない。「ボールを見て」と言われてボールを見るために必要な情報処理はかなり複雑である。

(1)この文を単語に切り分けて「ボール」ということばを取り出す
(2)自分の記憶貯蔵庫にある「ボール」という音の列と照合する。
(3)さらに、その音と結びついたモノのイメージにアクセスして、今見ているモノが自分の記憶にあるイメージと「同じ」かどうかを判断する。
(4)上記の判断に基づいて、「ボール」と判断した対象を見る。「見る」という行為自体、眼球を動かして対象に視線を向け、駐留させる、という運動制御も必要である。

このように「ボールを見て」に「正しく反応」するためには複雑な情報処理が必要で、「ボール」ということばを知っているか否かということ以前に、11か月の赤ちゃんには情報処理能力の点からハードルが高い。