101歳の長寿を全うした生活評論家、吉沢久子さんが日々の生活のなかで見つけた「幸せに生きる方法」「暮らしのアイデア」「簡単に作れるおいしい料理」は今の時代を生きる上でもヒントがいっぱい。エッセイ集『100歳の100の知恵』(中央公論新社)から吉沢さんの極意を1つずつ紹介します。

<100歳の100の知恵 79

『新しいことを始めるのに《遅過ぎる》ことはない』

姑は若い頃ロンドンで身につけた英語を生かし、70代になってから、若い人たちに英語と英語圏でのマナーを教える教室を開きました。

人に教えるからには、まず自分が向上しなくてはいけない。そう発奮した姑は、「50年前学んだ私の英語力を、現在のロンドンで試したくなってきたわ」と言ってひとりで海外に出かけ、語学力のブラッシュアップをはかったのです。
 

姑は「現在のロンドンで試したくなってきたわ」と単身ロンドンへ(写真提供:photo AC)

 

英語の教室を開き、充実した日々を送っていたある日、姑の長女が亡くなりました。子に先立たれた親の悲しみは、察してあまりあります。しかし10日ほど経つと、「あまり長くお休みすると申し訳ないから、来週からまたレッスンを始めようと思うの」と言うのです。

深い悲しみのなかにあった姑を支えたのは、仕事をしているという責任感と誇りだったように思います。

何歳になっても新しいことに興味を持ち、好奇心も知識欲も旺盛で、自立心に富んでいた姑。私にとって、心から尊敬できる女性の先輩です。

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