こうなったらマッチングアプリ

「さやかちゃん、マッチングアプリ、やったことある?」

「どんなだっけ? 出会い系サイト?」

『50歳。はじまりの音しか聞こえない 青木さやかの「反省道」』(著:青木さやか/世界文化社)

「うーん、そんな怪しい感じではないのよ。結構、みんなやっててさ。再婚した友人もマッチングアプリで知り合ったのよ」

「へーそうなんだ」

「北海道の人と知り合って、メールのやりとりで意気投合して、実際に会ったらすごく仲良くなって」

「うんうん」

「で、北海道に住むことになったの」

再婚した子の他にもやってる子がいてね、評判いいのよ。わたしたちもマッチングアプリやってみようよ、と友人は言った。

いや、あなたまだ離婚してないから、あ、そうだったわ忘れてた、やだ忘れないで、なんて会話をしながら、わたしは、物は試しでマッチングアプリとやらをダウンロードしてみた。

物は試し、と言いながら、そこに薄い期待がないわけではない。いつだって王子様を探しているよ。そっと。期待しすぎると落胆があるから薄い数ミリの期待にとどめよう。誰にも知られないように。