羽生くんって、実在したんだ
そしてついにその日がやってきた。会場のさいたまスーパーアリーナは人、人、人。ロビーには熱気が立ち込めていた。そしていざ、会場の中に入ると、ライトに照らされた満員の客席のなんと壮観なことか。しかし、席からアイスリンクを見てびっくり。私の席は注釈付きのスタンドA席で、アイスリンクからは一番遠いのだ。
アイスリンクまで、何百メートル?いや下手したらkm?最前列の方の人を見て、あまりの小ささにびっくり。注釈付きの席だからメインモニターは見えず、サイドの小さなモニターがあるのみ。最近ガクンと視力が落ちたこともあり、よく見えない。そしてみんな双眼鏡を持っている。
しまった!持っていない。羽生くんはちゃんと見えるだろうか?今日楽しめるだろうか?と、一気に不安になる。しかし、ショーが始まった瞬間、その不安は一気に吹き飛んだ。
羽生くんって、実在したんだ。
それがまず初めの感想だった。動画では何度も何度も何度も見たけれど、羽生くんは人間を超越したような存在だ。きっと天界から下りてきた人だと思っているし、一部では“妖精”とも言われている。ひょっとしたら、いままで見てきたのは幻?そんな気さえしてくる。でも、確かにそこに羽生くんはいた。
冒頭から、とにかく泣きっぱなしだった。最初は滲む程度だったが、だんだん漫画のようにポロポロ涙がこぼれた。なぜだか自分でもわからない。初めての生の羽生くんを見ると、ぶわっと涙が溢れるのだ。
「鼻血用に」と持ってきたティッシュは、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになり、気合いを入れたメイクもあっという間に落ちた。やっぱりあまりに遠くて表情は全く分からない。でも全身を使った動きの美しさが、今まで何度も見てきた羽生くんそのものだった。