もしこの世の果てがあるとしたら、きっとこんな光景なんだろう

前回の単独アイスショー『"GIFT" at Tokyo Dome』の抽選で全落ちして、映画館でのライブビューイングに参加したときは、「映画館だからトイレ並ばないし」「人込み歩かなくていいし」「表情まで大画面でしっかり見れるし」なんて、会場に行けなかった現実を受け入れるために強がってみた。

でも今回実際会場に行ってみて、観客の生の熱気、照明、音響に圧倒された。会場には、目に見えないエネルギーの粒子が飛んでいて、それを体中で感じることができる。そして何より羽生くんと同じ空間にいる尊さを味わえて、やっぱり会場は別格…と思ったのだった。

もしこの世の果てがあるとしたら、きっとこんな光景なんだろう。

開場前の写真

ステージを見ながらそう思った。音楽に合わせ、幻想的な光がリンクに散りばめられ、渦を巻き、波立ち、踊る。それに合わせ羽生くんもリンクを泳ぐように滑る。光に吸い込まれるように、光と共に舞うように。まるで宇宙や星空に浮かんでいるような。あまりに美しい光景に、何度も息を飲む。

そして曲が変われば、まとう空気がガラッと変わる。ステップの仕方がまるで別人なのだ。2曲目の椎名林檎の「鶏と蛇と豚」では、冒頭お経が流れ、意表を突かれる。羽生くんのプログラムはいつも想像を超えてくる。脳の髄が痺れるようなかっこよさにゾクッとして、圧倒される。感動のピークを迎えても、また次々と驚きと感動が塗り替えられていく。

羽生くんが動くたび、呼吸する度、空間に命が吹き込まれるようだ。あまりに幻想的で神秘的な光景に、なんだか夢を見ているような気持ちになる。リンクの上、そこだけ異世界が広がっている。羽生くんが創り出す世界を見ていると、自分と世界の境界線がなくなって、自分が溶けていく感覚になる。

あまりに引き込まれて、拍手することも忘れて、ただじっと見入ってしまう。人生の美しい記憶をかき集めたものよりも、きっと今目の前のこの景色が美しい。