心にとっての栄養
思えば羽生くんには救われっぱなしだ。心が沈む夜に動画を見るたび、どれだけ励まされただろう。この世にこんな美しいものがあるのなら、生きるということも、捨てたものでは無いのかもしれない。そう思わせてくれたのが、羽生くんの演技だった。
限りある命の全てを懸けて表現する羽生くんの姿を見ると、心が揺さぶられる。勝手な想像だけれど、羽生くん自身がいろんな感情、孤独や心が無になる瞬間、途方もない不安や虚無感、そういったものを感じてきた人だから、見る人の心の膜を突き破って、心の奥深くに届く表現ができるのかもしれない。
「エンタメは+αで、人生に必須ではない」「なくても生きていけるけど、あったほうがいいのがエンタメ」なんていう言葉も聞くけれど、私にとってエンタメは「人生になくてはならないもの」だと再認識した。
栄養を取らないと身体がやせ細って、やがて死を迎えるように、心だって栄養を取らなければ死んでいく。心にとっての栄養がエンタメなのだ。羽生くんの演技に触れてそう思った。
「羽生くんの演技を生で見たら、それまでの自分に戻れない」羽生くんファンが口を揃えてそう言っていたけれど、その感覚が今ならわかる。世界が少し、違って見える。そしてすでにもう一回羽生くんのショーを見たい。めっちゃ遠い席だったから、次はアイスリンクに近い席で見たい。
表情をちゃんと見たいからライブビューイングでもみたい。できるなら全公演みたい。次のために双眼鏡を買いに行かなくちゃ。神様、お願いします。次は前の方の羽生くんの表情が見える席が当たりますように。
(そしてこの原稿を書いたあと、ディレイ・ビューイングに参加。大画面で表情をしっかり観ることができた)。
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