「生きていこう」そう思った

人類が出来る動きのレパートリーを全て出し尽くしたんじゃないか?と思うくらい、ものすごいスピードで、ときに優美に、しなやかに、軽やかにダイナミックに動き回る。

羽生くんは音楽をこれでもかと言うほど、緻密に細密に表現する。曲が終わる度舞台裏に戻っていくのだが、去り際までため息が出るほど完璧に美しい。羽生くんが人間として確かに存在することはわかったけれど、それでもやっぱり羽生くんは超人的だった。

そして、あっという間にショーは終わり、アンコールに。アンコールの一曲目、「Let me Entertain you」で涙腺が崩壊した。一番明るくて元気でエネルギッシュな曲なのに、心から楽しそうにくしゃくしゃの笑顔で踊る羽生くんの晴れやかな表情(表情は本当は見えないけど、雰囲気でわかる)を見ると、なんだか泣けて泣けて仕方がない。

アンコールの観客の熱気は凄まじく、叫び、手を突き上げ、全力で手を振り、スタンディングオベーションで羽生くんを称えた。さっきまでゾーンに入ってめちゃくちゃカッコいい演技をしていた羽生くんが、マイクを持ち語りだすといつものふにゃっとしたあどけない羽生くんになり、そのギャップがまた尊い。

『死にそうだけど生きてます』(著:ヒオカ/CCCメディアハウス)

死ぬまでに一度だけでいいから見たい…なんて言っていたけれど、前言撤回。次も、その次も、いやもう死ぬまでにできる限りたくさん見たい!だって、羽生くんが創り出す表現をこれから先もずっと見ていたいから。

ショーが終わっても、しばらく涙が溢れた。帰りながらあの光景を思い出すと、目の奥がじんわり温かくなり、また涙がこぼれる。ひとしきり泣いたあと、心がすっと軽くなる。

最近の私はと言うと、心に膜が張ったように、何をしても心が動かない。何も感じない。今は人生の空白期間だ、とさえ思う。そんな私が羽生くんの表現に触れ、生きる力をもらった。なぜだかわからないけれど、「生きていこう」そう思った。