人の致死率は100パーセント
なにより、歳を取って怒らなくなった。「たけし、たけし、アタマはでかし」と言われていた子どもの頃から、「なんでも考えればいい」と思う頭でっかちで、いろんなことにカリカリしていた。大学に勤めていた頃は、そうした怒りが仕事の原動力になっていたけれど、この歳になると、けしからんと思うことにも、それなりの事情があるってことがわかってくる。
つまり、なるべくしてなる。病気だって自然現象だから、なるようになる、と思っている。老いや病を敵視する人も意外に多いけれど、歳を取れば、老いるのは当たり前だし、いつかは必ず死ぬ。人の致死率は100パーセントで、この先どうなるかは、なりゆきです。
だから、健康診断もがん検診も受けたことがなかったけれど、1年間で体重が15キロほど減り、体調が悪かったので2020年6月、26年ぶりに東大病院で受診しました。体の声を聞いたわけです。
そうしたら、検診で心筋梗塞を起こしていることがわかり、2週間、入院しました。ただ、これが痛くもかゆくもなかった。
動脈を広げ、金属の「ステント」を入れて通りをよくしてもらったので、入院前よりよくなったともいえる。コロナでじっとしている時期もありましたが、おかげで最近は外出も増え、昨秋(2022年)はラオスで2週間、虫採りとメタバース(インターネット上の仮想空間)の仕事をしました。
「脳化」が進み、人は頭で考えたことを都市という形にしてきましたが、住む世界を頭の中につくり、アバターの自分が入っていくメタバースはこの脳化の純粋系で、行く末に関心があります。