世の中にエネルギーを

正直、私と同じ世代の読者の方でも、1914年生まれの笠置さんをご存知の方は少ないことでしょう。

斯くいう私も、2019年の秋に『SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE』という音楽劇を演（や）らせていただくことがなければこれほど笠置シヅ子というアーティストに傾倒することはなかったと思います。

2019年の秋に上演された『SIZUKO！ QUEEN OF BOOGIE～ハイヒールとつけまつげ～』』という音楽劇の一幕（写真提供◎TOI LA VIE〈トワラヴィ〉）
すべての写真を見る

その公演が実現する5年近く前、プロデューサーが私の楽屋を訪ねていらっしゃり「神野さん、笠置シヅ子を演（や）りませんか。笠置シヅ子、神野さんに絶対合います。他にいません」と仰いました。

しかしあまりに突然、しかも雲をつかむようなお誘いだったので、大変驚きはしましたが合点がいかなかったことをはっきりと覚えています。

彼女は、笠置シヅ子という表現者が好きで、笠置さんと作曲家 服部良一先生が残された音楽・歌を通して、今のくたびれた世の中にエネルギーを送りたいという確固たる思いをお持ちでした。