それにしても、なぜフラメンコにそこまで心惹かれたのか。理由のひとつは日本の芸能との共通点です。バレエは空に向かって高く跳び、音もなく地に着く。フラメンコは大地を踏みしめ、「私はここにいる」と自らの存在に胸を張ります。
日本の踊りもまた、腰を落とし、大地に近いところで踊ります。歌と弦楽器と踊りの三位一体で演じられ、演劇的要素が必要だという点も共通しています。
また、芸者さんたちは家族を助けるために芸を磨く人も多かった。華やかに見える世界ですが、苦労した人も多いのです。
フラメンコでも、歌って踊って弾いて家族を助ける人たちが多かった。私が初めてスペインに行ったときはそんな感じでした。苦しい境遇のなか、悲しい思いやつらい体験がすごい芸を創っていったのです。
フラメンコは、スペイン各地に伝わってきた民族舞踊とヒターノ(ロマ)の芸能が融合したものです。現在ではヒターノもパジョ(ロマ以外の人)も偏見はなく、お互いに切磋琢磨しながらフラメンコの向上に尽くしています。