早稲田で「自由舞台」に入ったものの
中学から高校へ進んでも、演劇への情熱は決して衰えなかったという風間少年。
――高校時代はよく早稲田大学の大隈講堂に「自由舞台」の芝居を観に行ってましたからね。早稲田にはあと「木霊」と「劇研」という演劇サークルがありましたけど、僕は一浪して早稲田に受かると、すぐに自由舞台に入りました。
でも入った翌年が70年安保闘争の年で、授業なんかないんですよ。自由舞台の先輩たちは日本社会主義青年同盟解放派――通称青解のバリバリの活動家が多くて、駆り出されてデモばっかり行ってましたね。
一度機動隊に捕まって、向島警察に2泊3日の体験をしました。4人部屋に入れられたんですが、そこに牢名主じゃないけど山茶花究(さざんかきゅう)みたいな強面のおじさんがいて。
ものすごく親切にしてもらったんで、釈放されたら絶対この人に差し入れしようと思ってたのに、出たらその喜びですっかり忘れちゃった。
思えば「忘れられたり忘れたり」の青春でしたね。(笑)
<後編につづく>
風間杜夫
俳優
1949年東京都生まれ。早稲田大学演劇科、俳優小劇場養成所を経て、71年「表現劇場」旗揚げ。77年より、つかこうへい作品に多数出演。82年映画『蒲田行進曲』で人気を博し、 83年 TV『スチュワーデス物語』教官役で一世を風靡した。以降、その演技力に対し高い評価を受けて、幅広いジャンルで活躍。舞台・テレビ・映画に加えて、落語にも取り組み数多くの高座に上がるなど、華のある実力派俳優として第一線を走り続けている。
1983年 紀伊國屋演劇賞個人賞、1983年 84年 日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、2003年 文化庁芸術祭賞演劇 部門大賞、2021年 菊田一夫演劇賞大賞、他受賞。2010年 紫綬褒章、受章。2023年春の叙勲・旭日小綬章受章。
出演中の舞台『大誘拐』は3月10日まで、関西、九州、北陸、東北の各地で上演
関容子
エッセイスト
雑誌記者を経て、エッセイストに。1981年『日本の鶯――堀口大學聞書き』で日本エッセイスト・クラブ賞、角川短歌愛読者賞受賞。96年『花の脇役』で講談社エッセイ賞、2000年『芸づくし忠臣蔵』で読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞を受賞。『勘三郎伝説』『客席から見染めたひと』ほか著書多数。最新刊『銀座で逢ったひと』(小社刊)が好評発売中