荻原 明るい色を身につけると、自然とウキウキしてくるんです。そういえばうちの母はいま97歳なんですけれど――。
樋口 どこにお住まいですか?
荻原 長野県の高齢者施設に入所しています。母とは毎日、時間を決めてビデオ通話を通じて話をしているんです。
樋口 それはいいことですねぇ。
荻原 そのとき、母は必ずおしゃれをしてパソコンの前に座るんですよ。「お母さん、口紅つけてる?」と聞くと、「ちょっとね」という感じで。
樋口 やっぱり「出の衣装」は大事ですね。
荻原 出の衣装! いい表現ですね。母はもともとおしゃれだったから、身だしなみを整えて口紅をつけて人と話すのが楽しみのようです。
樋口 それがお母さまの、ご機嫌の秘訣なんでしょうね。
荻原 そうだと思います。
樋口 私は89歳のとき、乳がんの手術をしまして。当分再発はないだろうと言われて安心しましたが、我に返って「いつまでも生きちゃったらどうしよう」と――。
荻原 回復されてよかったです。長生きは、いいことじゃないですか! せっかく生まれてきたのだから、私は100年といわず、いつまでも生きたいと思っています。
樋口 さすがのバイタリティですね。でも、私の老いの実感からするとヨタヘロで足元もおぼつかないし、この先のお金のことも心配。友人知人が次第に去っていくし、寂しくないといえば嘘になります。
荻原 まぁ、樋口さんらしくもない!
樋口 やっぱり、実際にその年齢にならないとわからないことがあるものだ、と最近は謙虚になりました。でも、だからこそみなさんに、「楽しげに生きよう」と発破をかけているんです。意識して口角を上げて、日々の暮らしのなかで小さな喜びを見つけるようにしていると、自然と機嫌がよくなります。これは、最近の発見です。
荻原 「楽しげに生きる」。素敵な言葉ですね。