小倉智昭さん「実は事前の原稿なんかは用意していません。しないほうがいいとすら思っています」(提供:新潮社)
22年間にわたり朝の情報番組『とくダネ!』でMCを続け、朝の顔として活躍した小倉智昭さん。2016年に膀胱がんを宣告された後、肺への転移も見つかる中で、活動休止と再開を繰り返しながら闘病生活を続けてきました。2024年2月、『とくダネ!』のコメンテイターで友人でもある古市憲寿さんを聞き手に、小倉さんが人生を振り返った『本音』(新潮社)が刊行に。今回は、小倉さんがキャスターとして大切にしていることをご紹介します。

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『とくダネ!』の放送当初を振り返って

(太字:古市さん)
――「とくダネ!」で自由にコメントをしていたからですかね。司会者があんなにしゃべる番組って新しかったんじゃないですか。

たしかにあまりなかったんです。でも、それが引き受ける条件だった。

最初に依頼を受けた時には、フジテレビで午前10時台に「どうーなってるの?!」という番組をやっていたんですよ。それで高視聴率が取れたんで、フジテレビから「朝が今、数字が悪いんで、8時を受けてくれませんか」と言われたんです。

でもお断りしたんですよね。そうしたらその次の年に、またフジの太田さん(当時・情報企画局長)とプロデューサーの西渕(憲司)さんが事務所にわざわざいらして、「どうしてもやってくれないか」と言うんで、「そこまで言ってくださるんだったら」ということでお受けしたんです。

ただ、それまでのワイドショーってほとんど事件のVTRで始まって、ひどい場合は20~30分しないと司会者が出てこない。8時スタートの番組だと8時半になって、ようやく司会者が、「おはようございます」とあいさつをする。

それが僕は何だか嫌だったので、

「オープニングで自由に話をさせてください、それが条件です」

と言った。逆に言えば、そこしか僕からは注文を出さなかった。1分でも2分でもいいから時間をくださいといってスタートして、しまいにそれが10分とかになることもあって、やりすぎだって言われたりもしましたね。