ヨーロッパでの年末年始

海外旅行で言うと
作曲家の鷺巣詩郎(さぎすしろう)さんご夫妻とお正月を過ごすことが何年か続いていた時期があって
毎年のようにフランスやイタリア、ドイツなどで年を越していた。

監督はイタリアの方が食べられるものがたくさんあるので
イタリアにもよく行った。
ローマで大晦日(おおみそか)を迎えたりベルリンで元旦を迎えた年もあった。海外での大晦日はいつも決まって華やかなパーティーだったのでどれも大変楽しい思い出だ。

しかしヨーロッパでのお正月はえらく寒い。

ある年、デンマークのチボリ公園の中のホテル「Nimb」に泊まってから
パリに移動するという予定で動いていたのだが
成田からのデンマーク便がその日が最後のフライトというビンテージ(ボロ)飛行機だった。
古い機体だからやはり隙間風が入るの?と思うほどとにかく寒い。

毛布を頼むと夏休みのお昼寝か!と突っ込みたくなるようなうっすいガーゼのケットだ。
もう1枚欲しいと言うと1人1枚しか無いと断られたのでコートを着たまま
凍えながら眠った。

コペンハーゲンに到着した頃にはすっかり風邪をひいていた。
2泊してパリに移動したときには更に悪化して熱が出ていた。
パリではホテルコストに滞在した。
私はジャック・ガルシアが大好きなのでここはパリでの定宿
大大大好きなホテルである。
鼻下長紳士回顧録のイメージのもとにもなっている。

2泊してパリに移動したときには更に悪化して熱が出ていた(写真提供:Photo AC)

しかしながら病気の治療に向いている宿ではない。
一階のラウンジでは毎晩のようにパーティーしていて騒がしい。

どんどん悪くなる私だったがお正月で病院は休みだし
薬局も日本と違い処方箋がないと解熱剤のようなものも買えない。
ウエルカムフルーツとして最初から部屋に大量にあったイチゴを毎日少しずつ食べて
なんとか生きながらえていた。
監督も心配してせっせと看病をして頭に載せるタオルを替えてくれたりしていたが
あるとき、何か元気になるものを買ってくる!と言って出かけて行った。

そしてほっぺを赤くして帰ってくると
大きな包みを渡された。
中身はハムとチーズの挟まった
ハードフランスパンのサンドイッチであった。

すごい美味しそう。

でももう何日もいちごしか食べてないし熱まだあるし
なんでこんな固い食べ物。切る時ガリガリ音がするようなやつじゃん。
朦朧(もうろう)としながらそんなことを思ったのを覚えている。
逆にもうそれぐらいしか覚えていない。