頭脳明晰

母親のノブはしつけに厳しい人で、その教育の成果もあったのか、嘉子は正義感が強く、努力家で、他人の苦しみを親身になって考えられるような性格に育ちました。

また、ノブは信心深く、嘉子やその友人も連れて、一緒に浅草観音や巣鴨のとげぬき地蔵、牛込釈迦堂などをまわったこともありました。

理知的な嘉子がなぜか迷信や占いを信じるようなところがあった、というのは友人たちが口を揃えて語るところですが、10代の頃のこの不思議な迷信・占い好きもまた、ノブの影響があったのかもしれません。

嘉子は頭脳明晰で、考えたことを言葉として表現する力に秀でていました。

とはいえ、いわゆる「ガリ勉」ではなく、おおらかで明るく、友人たちと青春を満喫していたというのが、当時の友人たちからの嘉子評です。

ですから、卒業式で嘉子が総代になった時には、同級生たちはみなとても驚きました。

※本稿は、『三淵嘉子 先駆者であり続けた女性法曹の物語』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。


三淵嘉子 先駆者であり続けた女性法曹の物語』(著:神野潔/日本能率協会マネジメントセンター)

2024年度・前期連続テレビ小説「虎に翼」のモデルは、日本初の女性弁護士の一人であり、初の女性判事及び家庭裁判所長・三淵嘉子(みぶち・よしこ:主演・伊藤沙莉、脚本・吉田恵里香)。

本書では、三淵嘉子の生誕から晩年までの生涯と、嘉子とともに歩んだ家族、友人、同僚たちについて紹介する。

嘉子が生涯を賭して成し遂げたかったこととは何だったのか。

「女性活躍」が求められる今にあって、その先駆者の生涯が今、明らかになる。