当事者の発言は世の中を変える原動力に
こうしたトホホな日常を誌上で実況中継しているのは、当事者としての実感や実態をお伝えすることに意味があると考えているからです。
老いのさまざまな様相を受け入れ、なるべく上機嫌に暮らすためには、どうしたらいいのか。私のささやかな体験を参考にしていただきたいという思いとともに、社会のありように物申したいという気持ちもあります。
高齢になると、どんな問題が起き、どんな悩みが生じるのか。高齢者が少しでも暮らしやすい社会になるよう、当事者がどんどん発信していく必要があると思うのです。
そこで思い出すのが、後期高齢者医療制度ができるまでのことです。
後期高齢者医療制度とは、75歳以上、または一定の障害があると認定された65歳以上の人が、それまでの健康保険に代わって加入する医療保険制度です。被保険者が入院した際、高額な医療費に自己負担の限度額を設けるなど、高齢者の医療負担を軽減するための制度。2008年から始まりました。
この法律を制定するにあたっては、社会保障関係の審議会のほか、特別な委員会や検討会が設けられました。ところがそのメンバーの中に、当事者である75歳以上の人がいないのです。
いやぁ、呆れました。そこで私は国会前で仁王立ちし、「75歳以上の人が誰ひとりいないのは何事だ!」などと力強く演説。当時の厚労大臣は舛添要一さん。世論に動かされたのか、急いで新たな委員会が設けられ、私も委員のひとりとして指名されました。
70代半ばだったヒグチさん、元気いっぱいでした。なにせ国会前で気炎を吐いていたのですから。私は常々「70代は老いの働き盛り」と申していますが、まさにその言葉通り。要請があれば日本全国どこにでも飛んでいき、よりよい高齢社会の実現のために、弁舌をふるったものです。