病気をして猫に慰められる
樋口 ですが、おかげで思いもよらぬ体験をいたしました。猫が素晴らしいケアラーだという事実に立ち会ったのです。
坂東 まあ、そうなんですか。樋口さん、猫がお好きでずっと飼っていらっしゃいますものね。
樋口 ペット自慢なら3時間でも4時間でもおまかせください(笑)。ともかく、術後の私は家のベッドに横たわり、猫をかき抱いてさめざめと泣いておりました。「おかあたんは、死にそうだよぉ、もう助からないよぉ」と。
すると、猫が私の右腕を自分の前足で挟み込み固定すると、いたわるようにペロペロと舐めはじめるではありませんか。そのうち皮膚が真っ赤に腫れ上がって、「もういいんだよ」とやめてもらいましたが、猫のなんと利口なこと!
坂東 言葉は通じなくても、飼い主の痛みがわかるんですね。
樋口 猫にさえ哀れまれ、「これで治らずにおられるか!」と立ち上がることができました。ペットを飼っている方がいらしたら、体がおつらいとき、どうぞこの話を思い出してください。「猫に舐められてヒグチは元気になったらしい。うちは犬だからもう少し長生きできるかも」などと。そんなふうに考えるだけでも、気持ちがラクになるのではないでしょうか。
坂東 樋口さんの場合、大病されても、いつもフェニックスのように回復される。なぜなんでしょう?
樋口 病気に慣れているんでしょうね。転びやすいけれど、立ち上がりやすい。これも一つの生き方です。
坂東 確かに、人生つねに順風満帆というわけにはいきません。でも、たとえ転んでもまた立ち上がればいい。まさに七転び八起きの精神ですね。