スマホに「口内炎」「治らない」と打ち込んで検索しました。この期に及んでも、私の頭の中に「がん」という文字はなく、けれどそれは向こうから飛び込んできた。検索結果には「舌がん」の文字が並んでいます。

その1つをクリックしたら、画像がたくさん表示されました。その中に私の舌の状態とそっくりな1枚があり、画像の下には、「舌がん ステージⅢ ◯年◯月撮影」と説明が。そして「(その後死亡)」と記されていました。

その夜は一睡もできず、朝になって起きてきた夫にスマホの画像を見せて「私は舌がんで、ステージⅢ以上だと思う」と伝えると、画像と私の舌とを見比べた夫の顔色が変わりました。「嘘だ」と思いたかったのは、私よりも、夫のほうだったんじゃないかと思います。

 

突きつけられるとショックは大きくて

病院は、夫と相談して自宅から通いやすい大学病院を選びました。結果的にこの選択が、素晴らしい医療チームとの出会いを引き寄せ、奇跡的な回復へとつながったと思っています。実は、当初予約が取れたのは3ヵ月先でしたが、がんの可能性が高いことを電話で伝えたところ、たまたまキャンセルが出た枠に入れてくださり、幸運にもすぐに診ていただくことができたのです。

初診の日は、一人で病院に。先生が、私の舌を診てから言いました。「ご家族は近くにいらっしゃいますか」「家族構成は」「お住まいは」──すべての質問に答えて、「先生、悪性ですよね? 大丈夫ですからはっきり言ってください」と切り出すと、先生は、悪性の舌がんの可能性が高いとおっしゃいました。でも、ある程度覚悟ができていたからでしょうか、不思議なほど冷静でした。

先生によると、今後の治療の選択肢は3つ。1つ目は、手術で悪いところを全部取り除く手術療法。舌を切除し、そこに太ももの皮膚を移植して舌を再建。個人差はあるけれど、その後思うように話せなくなるリスクを伴います。2つ目は、放射線や抗がん剤などによる治療で、手術は行わない。そして、3つ目は緩和ケア。積極的な治療は受けず、痛みを取り除きます。手術をすすめるけれど、3つの中から自分で選んでください、と。

そして、耳鼻咽喉科で転移の有無を調べるエコー検査も受けました。首に違和感があったので、リンパ節に転移しているだろうと思っていましたが、結果はやはりクロ。その後、口腔外科の先生も立ち会い、正式に私の病状が告知されました。

舌がんのステージⅣ。所見ではステージⅢでしたが、リンパ節転移が認められたことでステージが一つ上がったのです。転移は予想していたのに、こうして突きつけられるとショックは大きくて。