この道を長く歩いていくには
草笛 6月になったら、『九十歳。何がめでたい』という映画が公開されるんですって。作家の佐藤愛子さんを私が演じたの。
内野 去年の暮れに僕が草笛さんの楽屋を訪ねたとき、まさにその撮影中でしたね。
草笛 私ってかわいそう(笑)。だってあなた、この歳で主演って大変よ。
内野 なに言ってるんですか。これまで何度もやってこられたでしょう。
草笛 やってないわよ。これまで120本以上の映画に出ているらしいんだけど、単独主演とかいうのははじめてなんですって。自分ではよくわからないけど。
内野 それは意外だなあ。そういえばこの間、「新横浜ラーメン博物館」に行ったんです。ここ、昭和30年代のレトロな街並みを模したところに、人気のラーメン店がたくさん入っているんですが、街並みに古い映画のポスターが貼ってあって、よく見たら「草笛光子」の名前があったんですよ。(笑)
草笛 あ、私が古い人間だと思ってバカにしてるんでしょう。(笑)
内野 そうじゃなくて、「草笛さんだ!」と思って、なんだか不思議な感覚になったんですよ。それだけ長く仕事されてきた方と僕は親しくさせていただいているんだ~って。
草笛 長くねえ。ここ最近は映画があったから、起きると毎朝「撮影です」って。これだけ長くやっていれば、そりゃあ疲れますよ。「今日は体調が悪い」ってウソついてみるんだけど、バレて叱られたりして。でも撮影中、本当に体調を崩して肺炎になっちゃった。もうこのとおり元気ですけど。
内野 (周囲のスタッフに)90歳で主演って、もしかしてギネスものですか?
草笛 賞、もらえるの?
内野 なるほど、国内ではギネスらしい、と。それはもう、ぜひ登録しましょうよ。