「なぜ日本人であるあなたが古代ローマ世界を?」という質問に対し、マリさんの回答は――
古代ローマ世界を描いた『プリニウス』が2024年の手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しました。「なぜ日本人であるあなたが古代ローマ世界を?」という海外メディアからの質問に対し、マリさんが繰り返し答えてきたのは――。(文・写真=ヤマザキマリ)

漫画の道もローマに通ず

私が同業者のとり・みき氏と10年にわたって連載してきた『プリニウス』という漫画が、本年度の手塚治虫文化賞マンガ大賞に選ばれた。

14年前に『テルマエ・ロマエ』で、すでにこちらの賞の短編賞をいただいていたのと、正直、賞のことなどあまり考えずに描いていたこともあり、想定外の展開に驚いた。

大尊敬する手塚治虫氏の名を冠した賞なのでもちろん嬉しさはこの上ないが、そもそも掲載は漫画誌ではなく『新潮』という文芸誌、両作者のマニアックな嗜好が盛り込まれた内容は、確実に読者を選ぶ。

私自身ですら、単行本のページを開くとセリフの多さと執拗なまでの描き込みに辟易するくらいだ。

手塚治虫文化賞というものが、ポピュラリティ重視ではないアワードであるということを今回の受賞で改めて実感した。