兵士は今なお戦っている

親族の葬儀で、焼かれた人骨を見たことは幾度かある。箸を使って骨上げした経験もある。

しかし、焼かれる前の人骨と接したのは、この「首なし兵士」が人生で初めてだった。

入り口の左側に被弾した穴が多数残る壕(2019年9月。日本戦没者遺骨収集推進協会提供)(写真:『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』より)

散らばっていた歯の長さにまず驚いた。焼く前の歯はこんなにも長いのかと。

この兵士の亡きがらを見る限り、指など小さな骨は土に還る寸前になっていると感じた。

一方で、腕や足など太い部位は原形を保っていた。

大腿骨を持った際のずしりとした感覚は、しばらく僕の手から消えなかった。

兵士はまだ戦っているのだ。僕は強くそう思った。

故郷に帰るため、風化と戦っているのだ。