若い頃の啓治さんとミサヨさん
仕事場にて、夫・啓治さんとミサヨさん(『「はだしのゲン」創作の真実』より)

そのうち、「ベタ(黒一色に塗ること)を手伝ってみないか」と言われて、やるようになって。ヒマだから徐々に線や点などのペンタッチの練習をしているうちに手伝うのが楽しくなり、いつの間にかアシスタントをするようになっていたんです。

部屋には、白土三平さんの漫画がずらーっと並んでいました。ある日、手に取ってみたら、人物が生きているように見えた。「わぁ~っ、木も景色も全部が動いてる! 映画を見てるみたい」と見惚れてしまって。

夫に「白土三平の漫画、すごいねぇ」と言ったら、「そりゃぁ、すごいよ。オレも好きだから」。私が「この草、生きてるみたい」と言うと、「生きてるだろう」。そんなことを話しながら、ペンの使い方を教えてくれたりしました。

そのうち完全に独立して、週刊誌の連載で忙しい時だけアシスタントに来てもらうようになりましたが、私も家事をしながら手伝っていました。

子どもは娘が一人います。でも私は教育ママじゃないから、ほったらかし(笑)。娘も、家に帰るとカバンを置いてバーッと遊びに行くような、まさにガキンコという感じの子でした。

後編につづく


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