ファンの方からお叱りをいただいて

引退宣言後にファンの方からまずいただいたのは、「勝手に辞めちゃうなんて!」というお叱りの言葉でした。何十年も応援してくださっている方々からしたら、「私たちを放っておいて、自分だけ辞めてしまうなんてどういうこと!?」と感じたのでしょう。事務所にたくさんお電話をいただきました。

僕は今、大学で書画を学んでいるんですが、その個展に来てくださったファンの方々から直接ご意見をいただいたときは、さすがにこたえましたね。「私たちファンクラブの会員に事前に知らせず突然発表するなんて。何十年も応援してきたのに」とか。

「これまでいくらお金を使ってきたと思っているの」というお声も(笑)。今まで一生懸命に尽くしてくださった方が、「悲しくて、もう橋さんの個展にも行きたくない」とまでおっしゃる。

僕のファンクラブのなかにはいくつかのグループがあって、コンサートに一緒に来てくれたり、その後、お茶をしたりする交流をとても楽しんでいらっしゃるようでした。

その方たちが、「橋さんを応援するために、みんなで行動するのが楽しみだったんですよ。行く場所がなくなってしまって、寂しい」「グループがバラバラになってしまった」「幸夫ロスです!」と言っていると聞いて、さすがに僕もしばらく落ち込んでしまいました。

僕だけのことではなく、ファンの方一人一人にとっても一大事だったんですよね。それだけ大きいことだったんだなと実感するとともに、ありがたさも痛感しました。ごめん、だったら僕、戻るよ。引退撤回の決断も、早いんです(笑)。そういう性格なんでね。

一方、妻は、男に二言はないだろうと信じていたようです。引退を惜しむ声があるとはいえ、一度宣言してしまったのだから、と。

僕が舞台に立ち続けられるよう、風邪を引かせちゃいけない、体調を万全に保たなきゃいけない、と妻は毎日すごく気を使ってくれていた。苦労してきた分、カムバックなんて絶対にやめてという気持ちもあったと思います。