人生を変えた肖像画

初めての授業では、偉人の面白いエピソードを話すことに決まったが、何度目かの打ち合わせのあとで担当ディレクターと雑談しているさい、何気なく私が「教科書の内容も年々変わり、あの有名な源頼朝像も別人の可能性が高くなって、教科書から消えちゃったんです」と言った。

その瞬間、ディレクターの顔つきが変わり、「先生、ぜひ、それをやりましょう!」と大声を上げたのである。

『逆転した日本史~聖徳太子、坂本竜馬、鎖国が教科書から消える~』(著:河合敦/扶桑社)

かくして「あなたが学校で学んだ歴史はもう古い」というテーマで、近年、教科書から消えた内容をテレビで話したところ、大反響となった。

この日以来、私の人生は変わってしまった。

ときどき好きな本を書きながら定年まで教員をつとめあげるつもりでいたが、執筆や講演の仕事が急増し、ついに退職せざるを得なくなり、いまは大学の客員教授の肩書きで本を書いたり、講演をしたりして生計を立てている。

だから私にとって源頼朝の肖像画は、非常に思い出深いものなのである。