そこを父親は許さない

ドロドロに疲れてお腹もペコペコなので道具を後回しにしたいのはわからんでもないが、そこを父親は許さない。父がいない時に磨き忘れていようものなら、私より甲高いサイレンのような声で息子は叱られている。

なので車を降りて車庫で練習着を脱いで家に入る息子は、パンイチで玄関に座って背中を丸めながらスパイクとグローブを磨くのだ。

何て光景。

でもそれくらい道具を大事にしろよ、と言うことらしい。
これはたぶん野球人にとっては常識なのであって、プロもアマチュアも関係なく、年齢やチームに関係なく、指導者から必ず教わっているのだ。

ちなみに夫はゲーム中、凡退してバットに当たり散らし地面に叩きつけたりする選手、道具に当たる選手が大嫌い。

家にたくさんあるグローブを一つ一つ訊ねると、まるで人みたいに「あの時」「あの試合で」「こんなプレー」の話がはじまる。よくもまあそんなに細かく覚えているもんだと感心してしまう。

道具を大事にしない野球人は、いないはずなのだ。