風の旅人
さっそく見に行ってみると、小高い丘の斜面に広々と敷地が広がっていて、後ろにはクヌギ林。景色がよくて、すぐに決めました。
斜面に向かってベンチがあり、細い溝にはきれいな水が流れていて、そこにお花を挿せるようになっています。
たくさんの区画があるのですが、ちょうど「風の旅人」という名前の区画が空いていて、自由奔放だった夫にぴったりだと思いました。
お墓自体は、木の近くに小さなプレートがあるだけなんですけどね。
お墓って暗くて怖いイメージがありますが、ここは真逆です。
心地よくて、ベンチに座って、丘からの景色を眺めたり、好きな俳句をひねってみたり……。
生前はもちろんケンカもしましたけど、「風の旅人」に行くと面白かった夫のいいところばかり思い出します。
春にはあちこちに桜が咲いて、桜葬というイベントもあります。
わたしもいつかこの「風の旅人」の夫の隣に眠るつもりです。1区画で10人まで入れるんですよ。
息子のお嫁さんも、気に入って、「わたしも入りたい」と言っていましたが、どうなることでしょうか。
※本稿は、『こんにちは! ひとり暮らし』(興陽館)の一部を再編集したものです。
『こんにちは! ひとり暮らし』(著:みつはしちかこ/興陽館)
83歳、今はいない家族や友人を思い出しながらひとり暮らし。
『小さな恋のものがたり』『ハーイあっこです』の著者が、日々の暮らしについて書いた最新刊エッセイ。