夜間係留イベント開催
しかし、あたりが暗くなる頃には、いつの間にかほとんどの気球が立ち上がっていた。
すごい数だ。それらが時々バーナーで内側から光る。すごくカラフルで美しい。
色も様々だが、パンダの形の気球や、タコの形の気球もある。いったい気球はいくつあるんだろう。広範囲にすごい数立ち上がってきた。
やった、これはたぶん、夜間係留イベント開催ということだ! 帰らなくてよかった。
しかしこの時点でも、「夜間係留イベント、開催です!」とか、ハッキリした開始の言葉はない。少なくともボクにはわからなかった。なんとなーく、始まっている、ようだなー、という感じ。
いや、これは始まっている。自分でそう納得するしかない。いや少なくとも眼前は、現実に素晴らしい光景になっているのだ。いつの間にか。
よーし、とあらためて気球群がよく見える場所を探し、土手の草斜面に腰を下ろす。
なにしろ座席とか観客席の区切りなんて何もない。大きな花火大会より全然いい加減だ。
ロックバンドの生演奏が始まり、アナウンスの女の子が甲高い声でいろいろ捲し立てたあと、一段と高い声で、「3、2、1、バーナーズ、オーーーーン!」と叫んだ。
するとそれに応えて、全機が一斉に内なる炎でライトアップされた。
うわあ、大迫力だ。これは美しい! さすがに群衆もどよめいた。
そして振り返るとその光が、土手の何万人か何十万人の顔を赤く照らしている。すごい光景だ。そのうちバーナーは、全体にだんだん暗くなっていく。
すると例のアナウンス女子が、再び、「3、2、1、バーナーズ、オーーーン!」と甲高く叫び、また全員がバーナーを点けた。