症状を自覚した時期

僕自身も、そんなトゥレット症の当事者の一人です。

どのような症状があるのかというと、数分間に1回のペースで、「ンッ」「アッ」などと声を上げる音声チックに加えて、まばたきや身体を動かしたりする運動チックが発生します。

そのなかには、自分の身体を叩いたり、大声で叫んだりする症状も含まれています。

僕の症状は、国内のトゥレット症当事者のなかでも、かなり重度なほうだと思います。

最初に僕がこの症状を自覚し始めたのは、小学校3年生くらいのころです。

ずいぶん幼い年齢で発症したかのように感じるかもしれませんが、一般的にはチックの症状は子どものころに発症することが多いと言われています。

『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』(著:酒井隆成/扶桑社)

多くの子どもは成長するにつれてチックがおさまっていくそうですが、なかには僕のように中学、高校、大学と、そのまま症状が続くケースもあります。

小さいころの僕は、もともとひとつの場所にじっとしていられず、おとなしく座っているとつい身体がムズムズして、立ち上がってしまう子どもでした。

そして、9歳前後になると、なぜか普通に歩けず、ヨタヨタと転ぶ動作をはさまないと歩くこともできなくなっていました。

そのころから、周囲の人から「酒井君はちょっと変わっているね」「何かあるかもしれないな」という反応を持たれることが増えていき、漠然と「あぁ、自分はほかの人とは違うのかもしれない」と考えるようになったのを覚えています。

以来、チックの症状と付き合いながら、十数年が経過しています。