芸人になって初めての恋は、テレビ局のADさんでした。全然話したことがない状態にもかかわらず、劇場の前で毎日のように待っていてくれました。

「好きです! デートしてください!!」

そう言われても、私から見たらよく知らない人です。生来の人見知りが顔をのぞかせて、怖いから無視して通りすぎることしかできませんでした。最初は警戒していましたが、仕事を一緒にするうちに立ち話をするようになり、電話番号の交換をして、休みの日に長電話をする仲に発展します。

今は電話番号の交換くらいなら出会ってすぐにする人もいるでしょう。でも、昭和の時代はそう簡単なことではありませんでした。携帯電話はない時代なので、電話は家にある一台だけ。しかも、電話をかけるとその家に住んでいる家族が出る可能性があるのです。

母から「また電話かかってきてるよ」と言われる私も、「代わりますからちょっと待ってくださいね」と言われる相手も、ドキドキする。そんな時代がありました。

だから、昭和では長電話をするところから恋が始まると言っても過言ではなかったんです。例にもれず、私もその人と長電話をするようになり、初デートの誘いを受けることになったのですが、そこでも生来の人見知りが顔をのぞかせてしまいます。

男性と二人で食事をするという想像をしただけで緊張してしまう私。そんな私が助けを求めたのは、あき恵姉さんでした。

 

『悲しみは笑い飛ばせ!島田珠代の幸福論』(島田珠代:著/KADOKAWA)