なんでこんなことをしたのか。理由は大きく分けて2つあります。ひとつは、私は小さい頃から「結婚する人じゃないとそういうことはしちゃいけない」という価値観で育てられていたから。

彼の顔が近づいてきたとき、なぜだかは分からないけど、私は大人の関係になることを許してはいけないと感じてしまったのです。

そしてふたつ目は恋愛よりも仕事のほうが大事だと改めて実感してしまったから。この時期は、男性の股間を指先ではじく「チーン」というネタが生まれた直後で、今ここで男性と本当にいやらしいことをしてしまったら、舞台上でできなくなってしまう気がしたのです。

私はまだまだお笑いをしたかったし、自分はこれから光り輝くんだと信じていたからこそ、目の前の男性から逃げ出すことになってしまいました。男性と関係を持って、仕事に影響が出てしまったらどうしよう、そんな不安が若い私には払拭できずにいました。

気持ちが落ち着いて、このまま終わりにしてはいけないと思ったのですが、その後何度電話をかけても彼に繋がることはありませんでした。こうして、ひとつの恋愛が終わりを告げたのです。

 

※本稿は、『悲しみは笑い飛ばせ!島田珠代の幸福論』(著:島田珠代/KADOKAWA)の一部を再編集したものです。


悲しみは笑い飛ばせ!島田珠代の幸福論(著:島田珠代/KADOKAWA)

唯一無二の持ちギャグで、新喜劇を長きに渡り支えている看板女優の島田珠代。
酸いも甘いも知りつくした彼女が、人間関係や仕事、恋愛、自分らしさ、そして女として生きることなどを赤裸々に語った自身初のエッセイ。笑いあり涙ありのエッセイを読めば、人生のヒントが見つかるかも?
巻末には推しと公言するロングコートダディ堂前さんとの対談も収録。