(写真提供:『悲しみは笑い飛ばせ!島田珠代の幸福論』/KADOKAWA)

キスからの逃亡

何回かデートを重ねるうちに、二人でもご飯に行けるようになった頃、その人から「ウチにおいでよ」と誘われて家に行くことになりました。

その人はカメラの勉強もしていたので、自分が撮影した映像を見せてくれて、将来はどんな映像を撮りたいか、そしてどんな仕事をしたいのかについて熱く語ってくれたのが印象に残っています。

自分の夢について語っていた彼が、急に黙り込んで私をジッと見つめた瞬間。私は「あぁ、これが俗に言う《いい雰囲気》ってやつなんだな」とぼんやり考えていました。そっと彼の顔が近づいたとき……私は思ってもいなかった行動を取ります。

自分のカバンをひったくるようにして手に取り、玄関に全力でダッシュ。自分の靴を片手で持ち上げて、そのまま部屋を後にしました。靴も履かずに階段を駆け下りて、前だけを向いて走りました。