仏教の教え

そばにいた尼君(あまぎみ)が「まあ、なんと幼いこと、罪になりますよといつも言っていますのに」とため息をつきます。

尼君の考えは、生き物を殺すことをいましめる、不殺生戒(ふせっしょうかい)という仏教の教えに基づくものです。無益な飼育は、殺生に通じるという考えです。

『美しい原文で読む-源氏物語の恋のことば100』(著:松井健児/中央公論新社)

しかし子どもが生き物を飼いたいと思うのは、自然なことです。

とくに小さなもの、愛らしいものをそばに置いて、かわいがりたいと思うのは、その生き物が自分と同じ仲間であり、大切な友だちだという感覚があるからでしょう。

そして紫の上が仏教の教えと無縁だったのは、大人とは別の世界にいるからです。