諦めきれなかった詞に音がついて
詞をいただいて、かれこれ40年以上。6年前に出した『追憶』というアルバムのレコーディングのとき、プロデューサーを務めてくれた鈴木慎一郎さんに「気が向いたら音をつけて」と詞の写しを渡したことがありました。彼は50年前に私のアルバムを制作してくれた鈴木正勝さんの息子さんで、赤ちゃんのときから知っています。
実は正勝さんにも、監督の詞をお目にかけたことがありました。でも黙って目を通すだけで、あまり関心を示してもらえなかったような記憶がありますね。
それがなんと今回、『7』の制作に入る前に、慎一郎くんから「あの詞に曲をつけたから」とデモテープをひょいと渡されて。お父様のこともあって、まったく期待していなかったので、とっても嬉しかった。でもあの詞を音にするまでは、私はずっと諦めきれなかったですよ、本当に。
曲はパワフルなロック調。この2曲にかぎらず、アルバム全体を通して、これまで私が歌ってこなかった世界観を表現できたと思います。慎一郎くんは、正勝さんが私に作った歌謡曲や演歌を聴きながら、「芽衣子さんにはロックのほうが似合うのに」と歯がゆく思っていたのですって。(笑)
とはいえ、「これ私がやるの?」と思う曲もいっぱいありました。「ムリ! こんな難しいの歌えません」って何度言おうと思ったか。
でも私、「できない」って言葉は一番口にしたくないんですよね。そもそも「慣れ」というのが大嫌い。誰も想像できない世界を、自分の想像力でもって表現し、皆さんに伝えるのが私たちの仕事でしょう? そういう意味でも、慎一郎くんは私のことをうまく挑発してくれたのかもしれません。