笑えて、ドキドキする映画
エスムラルダ(以下エスム) ダイバーシティーとか、多様性のある社会とかいうけど、現実は違うのよね。
東 そうなの。今回も当初、話題になればと脚本家に超有名な人を選んで依頼しました。でも「暗い映画じゃなく、コメディにしたい」というと、「障害者をどう扱っていいかわからない」と悩まれちゃう。挙句「1ヵ月ワークショップをしてから…」と言われ、お金も時間もないので残念ながら実現できなかったんです。
それなら、エスムさんはもともと脚本家で、自身がドラァグクイ―ン。マイノリティの気持ちもわかるからとお願いしたの。勿論大正解!
――なるほど。エスムさんは、脚本を書く上での工夫は?
エスム 法廷ものなど色んなアイディアは出たんですけど、「笑えて、ドキドキして」と詰めていくと、「やっぱ殺人事件、密室ミステリーじゃない?」と。(笑)
東 「なら、私が殺されたい」って頼んだの。私は今まで事件を解決する側の役などが多かったから、殺される役が回ってこない。だから経験がなくて。
――え、そうなんですか?
東 テレビ業界の暗黙の了解みたいなものがあるんですよ、実は。
エスム そこで東さんに死んでいただくことにしたんです。それも、何度も。(笑)
――拝見しましたが、アーティスティックな映像でした。殺された東さん、すごく美しくて。
東 本当に? 嬉しい。照明とカメラマンさんの力です。 衣装やメイクもよかったでしょう?キャストの皆さんのように、多くの人と違う体形だったり、車椅子だったりすると、衣装は大変なんですよ。でも衣装担当が、素晴らしいものを用意してくれた。メイクも通常の映画の倍の人数を頼んで。
――特に「だうんしょーず」の峰尾さん。可愛くて、踊りも素晴らしく感動しました。
東 彼女は普段、「ダウン症のある人は、ダウン症の特徴がなくなるから」とメイクしてもらえないことがあるの。彼女らしくきれいだったでしょ?
――はい。逆にドリアンさんは地のままが素敵で。
ドリアン そうなのよー、今回は自分役だから、役作りがなくて楽だった。でも進行役だから、異常にセリフが多くて。これはエスムさんの意地悪だと思うんだけど。
エスム いやいや。(笑)
でも、カンペなしでやり切りましたね。内心すごいなと。
ドリアン 私が出ずっぱりで、みんな飽きたんじゃないかと思うんだけど。
東 その「圧」の強さで持つのよ! ちなみに何故この一座に入ってくれたの?