笑えて、ドキドキする映画

エスムラルダ(以下エスム) ダイバーシティーとか、多様性のある社会とかいうけど、現実は違うのよね。

 そうなの。今回も当初、話題になればと脚本家に超有名な人を選んで依頼しました。でも「暗い映画じゃなく、コメディにしたい」というと、「障害者をどう扱っていいかわからない」と悩まれちゃう。挙句「1ヵ月ワークショップをしてから…」と言われ、お金も時間もないので残念ながら実現できなかったんです。
それなら、エスムさんはもともと脚本家で、自身がドラァグクイ―ン。マイノリティの気持ちもわかるからとお願いしたの。勿論大正解!

――なるほど。エスムさんは、脚本を書く上での工夫は?

エスム 法廷ものなど色んなアイディアは出たんですけど、「笑えて、ドキドキして」と詰めていくと、「やっぱ殺人事件、密室ミステリーじゃない?」と。(笑)

エムスラルダ
脚本を書く中、色んなアイデアが出たけど「やっぱ殺人事件、密室ミステリーじゃない?」と語るエスムさん(撮影◎本社 奥西義和)

 「なら、私が殺されたい」って頼んだの。私は今まで事件を解決する側の役などが多かったから、殺される役が回ってこない。だから経験がなくて。

――え、そうなんですか?

 テレビ業界の暗黙の了解みたいなものがあるんですよ、実は。

エスム そこで東さんに死んでいただくことにしたんです。それも、何度も。(笑)

――拝見しましたが、アーティスティックな映像でした。殺された東さん、すごく美しくて。

 本当に? 嬉しい。照明とカメラマンさんの力です。 衣装やメイクもよかったでしょう?キャストの皆さんのように、多くの人と違う体形だったり、車椅子だったりすると、衣装は大変なんですよ。でも衣装担当が、素晴らしいものを用意してくれた。メイクも通常の映画の倍の人数を頼んで。

映画『まぜこぜ一座殺人事件~まつりのあとのあとのまつり』(C)2024一般社団法人Get in touch
映画『まぜこぜ一座殺人事件~まつりのあとのあとのまつり』(C)2024一般社団法人Get in touch

――特に「だうんしょーず」の峰尾さん。可愛くて、踊りも素晴らしく感動しました。

 彼女は普段、「ダウン症のある人は、ダウン症の特徴がなくなるから」とメイクしてもらえないことがあるの。彼女らしくきれいだったでしょ?

――はい。逆にドリアンさんは地のままが素敵で。

ドリアン そうなのよー、今回は自分役だから、役作りがなくて楽だった。でも進行役だから、異常にセリフが多くて。これはエスムさんの意地悪だと思うんだけど。

エスム  いやいや。(笑)
でも、カンペなしでやり切りましたね。内心すごいなと。

ドリアン 私が出ずっぱりで、みんな飽きたんじゃないかと思うんだけど。

 その「圧」の強さで持つのよ! ちなみに何故この一座に入ってくれたの?