映画からのインヴィテーション
ところで、『そりゃなしだろ!!NAI NAI’ 91』という本がなぜか私の本棚にあって。
――え? ラジオ本(笑)、リスナーの本ですよ。TBSラジオで『岸谷五朗の東京RADIO CLUB』、いわゆる「レディクラ」という番組を90年から4年間ほど担当してました。この番組がきっかけで名前が知られるようになって、それが映画『月はどっちに出ている』につながるんです。
ある日、崔洋一監督から、ちょっと会いたい、と言われて、行ったら「この台本、読んでくれ」って。あ、これ、オーディションなんだな、と思って読んで。
あとで聞くと、実は会った時にもう「ああ、姜忠男(カンユンナム)がいた!」と思ったそうなんです。在日韓国人のタクシードライバーの役なんですけど、でもそのあとに100人くらいに会ってるんですよね、崔さん。まだ探してた。(笑)
それで、結局主役に選ばれて。原作を書いた梁石日(ヤンソギル)という在日二世の作家と、鄭義信(チョンウィシン)という脚本家、そして崔監督、全員のルーツがコリアンで、彼らがずっと感じてきたことが映画になっている。だから遠慮なく本音で描けるんですね。
共演したフィリピン人のルビー・モレノさんもよかったし、タクシーの営業所長役で出ていた麿赤兒さんも面白かった。昔、僕が中野のアパートにいた頃、麿さんの家が近くで、お弟子さんたちがゴロゴロしてて、「妖怪屋敷」って言ってましたけどね。(笑)
とにかく『月はどっちに出ている』で、お茶の間にも知られるようになったのが、やっぱり第2の転機でしょうね。