旅に出てこそ

自分の世界を広げてくれる人たちに出会うには、とにかく行動しかないでしょう。じっと同じ場所で待ち続けているだけでは扉は開かれない。

旅は自らの人生を満たすための大事な手段だと思います。私がこれまで様々な人と出会ってきたのも、地球のあちこちを転々としてきたからです。

「スマホの画面の中だけですべてが完結する生活をしていたら、人間が生きるために必要な想像力や忍耐力がどんどん脆弱になってしまう」(撮影:山崎デルス)

旅に出ると、世界は自分の目の前にあるものだけじゃない、横を見ても後ろを見ても、すぐ隣にもあるのだと気がつきます。それぞれの場所で、自分とはまったく違う正義感と倫理観を持った人たちが生きていることをリアルに実感できる。

環境を変えるのが面倒なのはわかります。精神力も無駄に費やすより燃費の良さを選びたくなるのもわかります。

でも、コロナ禍もひと段落したことですし、また旅に出かけてみるのはいかがでしょうか。昨今は近隣の温泉に行くのすら億劫だという人もいるそうですが、メンタル・エコノミー症候群になってしまわないためにも旅はお勧めです。

スマホというものが手放せなくなったこのご時世では、見知らぬ街で道に迷っても他人に話しかける必要もなければ、列車や飛行機で隣り合わせた人とおしゃべりする機会も減りました。しかし、スマホやPCの画面の中だけですべてが完結する生活をしていたら、人間が本来持って生まれた想像力や本能はどんどん退化していってしまうことになるでしょう。

人間との接触が億劫なのもよくわかります。でも、他の動物同様、地球がどんな場所でどんな特徴があり、同じ人間でもどれだけ多様なのか知ることは、人間として生きていくうえで必要なことなんじゃないかと思っています。