まったく違う道を歩んだ可能性も
下重 芸能界とは相当厳しい世界だと思いますよ。あなたとお話ししていて、より理解が深まりました。そんな業界で、秋吉さんは秋吉さんにしかできない仕事をしている。
秋吉 「アニマルプラネット」のドキュメンタリーなんかを観ていると、ジープに乗った動物学者が野生動物を追いかけている姿が映るでしょう? キラキラと目を輝かせて。そういう姿を高校生の時にみていたら、今頃まったく違う道を歩んでいたかもしれないなあ、なんて思ってしまうの。
※本稿は、『母を葬る』(新潮社)の一部を再編集したものです。
『母を葬る』(著:秋吉久美子、下重暁子/新潮社)
「母の母性が私を平凡から遠ざけ、母の信条を大胆に裏切る土台が出来上がってしまった」(秋吉)。
「30年以上、一度も母の夢を見たことがない」(下重)。
過剰とも思える愛情を注がれて育ったものの、理想の娘にはなれなかった……
看取ってから年月が過ぎても未だ「母を葬〈おく〉る」ことができないのはなぜなのか。
“家族”という名の呪縛に囚われたすべての人に贈る、女優・秋吉久美子と作家・下重暁子による特別対談。