土地を勝手に処分することは許されない?

司法書士に相談したところ、「その実家は売ることができない」というのです。というのも、実家の土地は両親の共有名義。

所有権は父親が9割、母親が1割ですが、その比率がどうであれ、所有者がひとりでも自分で判断する能力を失っていると、その土地を勝手に処分することは許されないのです。

これが、「認知症による財産の凍結」です。

実家を売却できないA子さん一家は、自分たちの預金を取り崩して両親の介護費用や入院費用を払わざるを得なくなりました。

住宅ローンもまだ残っていますし、これから2人の息子を大学に行かせなければならないのですから、この負担は相当に重いでしょう。

A子さんは、つい「母が早く死んでしまえばいいのに……」と思うようになってしまったとのこと。何とも切ない話ですが、お金のことを考えると、A子さんを責める気持ちにはなれません。

母親が亡くなれば、土地の所有権はA子さんをはじめとする親族が相続しますから、9割の所有権を持つ父親と1割の所有権を持つ親族の判断で売ることができるわけです。

 

※本稿は『親が認知症になると「親の介護に親の財産が使えない」って本当ですか?』(大和出版)の一部を再編集したものです。

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