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【幸福寿命を延ばす5つのルール】
3)「参照点」は低くしておく

「参照点」という考え方をご存じでしょうか? 私たちが何かを判断したり、選択したりするときに、ある特定の基準点(参照点)を無意識に持ち、それに基づいて評価してしまう心理傾向のことです。

例えば、会社の社長だった方が退任して、毎月50万円もかかる高級老人ホームに入居したとしましょう。毎日5000円もする豪華な食事が出て、一見、何不自由ない優雅な生活に見えます。でも、その方が、社長時代の料亭や高級レストランでの食事を基準にしていたら、その5000円の食事が贅沢かといえば、満足度は大きく下がってしまうかもしれません。

さらに、社長時代には、周囲の人からちやほやされ、威張ることができた人は、老人ホームの職員に多少親切にされた程度では幸せとは感じにくいかもしれません。本人が社長時代を基準点(参照点)にしている限り、いつまで経っても幸せを実感することはできないでしょう。

一方で、貧しい生活を送ってきた人が生活保護を受けながら老人ホームに入所した場合、いままでに食べたことのない、栄養バランスの取れた食事が提供され、毎食しっかりと食べられるようになります。

施設の職員も、「この人は貧乏だから」と差別することなく、親切に接してくれます。すると、「この歳になって、こんなにおいしいものが食べられて、みんなに親切にされて幸せだ」と感じるかもしれません。

このように、どこを自分の基準にするかによって幸せの感じ方は大きく変わります。多くの人が前述の社長のように、バリバリと働いていた若いころや、子育てに忙しくしながらも充実した時間を過ごしていたころの自分に参照点を合わせてしまいがちです。「昔はもっとスタスタ歩けたのに」とか「もっと賢かったのに」「友達がもっとたくさんいたのに」といった具合です。

参照点を高くしてしまうと、幸せを感じるハードルが上がってしまいます。そこで、いまの自分に適した参照点はどこにあるのか、一度考えてみてはいかがでしょうか。

若いころの自分と比べて嘆くよりも、「あれもできる」「これもできる」と、できることを数えたほうが、毎日を幸せに過ごせるようになることでしょう。