プレミアをつける

人気絵師二人を用いた、オールカラーの三冊組。しかも「美濃紙」という高級な紙を使用した豪華本が、『青楼美人合姿鏡』である。

蔦重はこの本にさらなる「豪華装丁」を施した、プレミア版もつくったとされる。一体誰が、この超豪華バージョンを所有したのだろう。

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

むろん遊女たちの、一番の馴染み客だ。「どうだ、俺はこの豪華本を贈られた人間なんだぞ」と。彼らにとっては、その本を持っていることが、「自分こそ一番」の証明になったわけだ。吉原通にとっては、なんとしても所有したい本になった。

「このプレミア本は、いったい誰がつくったのか?」
「あの吉原の若い版元、蔦屋じゃないか?」

そんなふうにして、蔦重は評判を築く。超豪華だからこその威力である。

 

※本稿は、『蔦屋重三郎の慧眼』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

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蔦屋重三郎の慧眼』(著:車浮代/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

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