菊之助さんの初舞台、1984年2月歌舞伎座『絵本牛若丸』。左より尾上菊五郎、六代目尾上丑之助(現・菊之助)((c)松竹)

その後、岳父には本当に細かく具体的に、仕草から台詞の抑揚から教えていただきました。知盛(『義経千本桜』)、大蔵(『一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)』)、光秀(『時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)』)……とか、ほとんど全部ですね。

中でも夏祭(『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』)で岳父が団七の時は私が女房お梶、丑之助が倅の市松でした。岳父は「住吉鳥居前」で丑之助をおんぶして引っ込むところがなさりたくて出したんでしょうね。

団七は下駄を履いてますし、丑之助ももうそんなに小さくなかったしで危ないと思ったんですが、どうしてもなさりたかったんでしょう。あの嬉しそうだった顔は、今でもよく思い出します。

丑之助の日々の稽古事については、私が厳し過ぎると女房によく言われます。でもたまに、好きな料理をして家族サービスすることも。ラタトゥイユとか、テールスープとか。スパイスカレーは女房が好きで、「また作って」と言われるんですが、最近作ってませんね。(笑)