日本人女性の20代から40代までの約6割が、自覚症状のない「かくれ貧血」だという。実は、かくれ貧血は、年齢や性別を問わずに増えている。その原因は鉄不足。「日本人は鉄分の摂取をおろそかにしてきたのです。集中力がない、疲れやすい、頭痛がする人は多いですが、その原因に鉄不足が潜んでいるかもしれません」と指摘するのは、アスリート、高齢者とその家族などに、幅広く栄養指導をしている川口美喜子教授だ。川口教授に、かくれ貧血の実態と現代の生活環境での効果的な鉄分摂取について聞いてみた
鉄分が足りないとどうなる?
━━鉄分が不足すると貧血でフラフラしたりすることは知られていますが、それ以外にどういう症状が出るのでしょうか。また「かくれ貧血」とは?
鉄が足りないと、酸素が体中に行き渡らなくなり、集中力がない、イライラする、体がだるい、疲れやすい、頭痛、めまいなど、様々な症状が出ます。皆さんは不定愁訴のような状態になると、仕事が忙しすぎる、寝不足、更年期など、いろいろな原因を考えますが、鉄不足かな?とは思いませんよね。
人間ドックや健康診断、献血などの血液検査でヘモグロビンの数値は調べますよね。それが正常範囲内であれば貧血の指導はされません。かくれ貧血は、フェリチンの値を調べなければわからないのです。へモグロビンは血中で酸素を運ぶ役割を持つ鉄、フェリチンは肝臓、骨髄、脾臓に鉄を貯蔵し、不足すると補給する鉄分です。
お金に喩えると「貧血」はお財布にお金(ヘモグロビン)が少なく、銀行に預金(フェリチン)も少ない状態。「かくれ貧血」は、お財布にはお金(ヘモグロビン)があっても、銀行の貯蓄(フェリチン)は底をつきかけの状態です。
一般の健康診断では、フェリチンを検査しませんが、自身が自覚をしている最近の体のだるさ、疲れやすい、頭痛やめまいがするなどの症状を伝えた場合には、医師や医療関係者は、貧血を疑ってフェリチン値を調べたり、さらに日常生活について詳しく聞いてくれます。