清水の舞台から飛び下りるつもりで、ケーブルカーに乗車…(写真:stock.adobe.com)
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11月11日11時に

10年ほど前、さまざまな悲しいできごとが続き、「パニック障害」を発症した。四女の私は「家付き娘」だが、夫が姓を変えてくれて私の両親と同居している。

閉所恐怖症、過呼吸、不眠などの症状があり、電車に乗ることができない。心療内科に通ったが、効果はすぐに表れるものではなかった。一番の薬は、「時」だ。2年ほど前から、徐々によくなってきている。

短い距離だが電車にも乗れるようになってきた頃、私をよく知る友人が、2人の思い出の地・高尾山へ誘ってくれた。11月11日11時に、中央線の高尾駅で待ち合わせ。10年ぶりの再会だった。

好天に恵まれた当日、無事に電車で待ち合わせ場所に到着。思い切って、高尾駅からさらに山側に近い高尾山口駅へも電車を利用した。

そこから歩いて、ケーブルカーの駅にたどり着く。電車よりもさらに狭い空間に耐えられるのか、逡巡する気持ちはあったが、「片道6分」にも背中を押された。

清水の舞台から飛び下りるつもりで、ケーブルカーに乗車。あっという間の6分だった。紅葉し始めた歩道を歩きながら、こうやって成功体験を一つ一つ増やしていけばいいんだ、と思えた。

「清滝⇔高尾山」と書かれたケーブルカーの切符は私の宝物。そして私のラッキーナンバーは、「11」だ。

何回か乗り換えの必要な都心に住む、娘の家にもいつか行ってみたい。それが私の次の夢だ。


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