結核が減って、がんが増えた

第二次世界大戦直後、最も多い死因は「結核」でした。しかし、その後の経済成長に伴い、衛生環境や栄養状態がよくなったうえ、医療技術も向上して、結核で死亡する人は激減しました。

つまり、それまでがんが発症する前に結核で死亡していた人が死ななくなったために、年を取ってからがんを発症する人が相対的に増えたのです。

(写真提供:Photo AC)

なお、心疾患で死亡する人も戦後から右肩上がりになっていて、死因第2位の常連です。これは、外食文化が根づき食生活が豊かになったため、脂質代謝異常や糖尿病などの生活習慣病を患って、動脈硬化症になる人が増えたからでしょう。

余談ではありますが、死因統計推移を見てみると1995年と1996年だけ、脳血管疾患が、心疾患を抜いて第2位となる現象が起きています。

実はこの直前に、厚生省(現在の厚生労働省)から、死亡診断書に「心不全」と記入することを控えるようにと通達があったのです。それまで医師は死因が不明確なとき、死亡診断書には慣習的に「心不全」と記入していたのですが、それができなくなったため、ほかの死因として「脳血管疾患」と記入したわけです。

これは、死因統計の信憑性や、日本の死因判断の精度を疑われても仕方がなく、先進国として恥ずべき事態でした。